明日は聖なる日。イブは平日なので私も普通に仕事でしたが、道路脇の石像ゴジラもサンタの帽子を被り、コンビニに駐車中のワゴン車には両窓から角が生え、前面エンブレムに真っ赤なお鼻が付いていました。サンタヘルプ要員なのでしょうか。トナカイの橇に石像ゴジラは重すぎるので、案外丁度良いかも。
ではイブの夜にお届けする Short Story スペース・ラヴ 最終回。 ・・・・・☆彡
[前回までのあらすじ]
留学中の僕は帰省の途中で、惑星L878の植物であるワラと出会う。七色の髪を持ち、どう見ても女の子に見える彼女は、L878の水資源危機を回避するため、僕の母国L1123惑星の水を自ら吸収する実験を行うために僕の帰省先へ向かう所だった。しかし到着した彼女は、初めて見る水車にシンクロして倒れてしまう。僕は水車を緊急停止し彼女を救出、更に歌で目覚めさせたが、回復した彼女は使命を果たすと宣言し、僕の前から消えてしまう。
第1話 http://yukikazepedaling.blogspot.jp/2015/11/blog-post_15.html
第2話 http://yukikazepedaling.blogspot.jp/2015/11/blog-post_23.html
第3話 http://yukikazepedaling.blogspot.jp/2015/12/blog-post_6.html
第4話 http://yukikazepedaling.blogspot.jp/2015/12/r.html
[第5話 最終回]
僕は丘を駈け降りた。ワラが水車へ行った事は自明だった。水車小屋の入口にはエナジー監督署員。
『今度は何だあ?』
「すみませんっ!緊急なんです。止めたりしませんからー」
叫びながら関門突破。ワラーーー!
ワラは水車の横で倒れていた。言わんこっちゃない。
「どうしたワラ!返事しろ!返事しろよ 返事しろよぉ!」殆ど絶叫になっていた。ワラは動かない。眼も閉じたまま。
「ワラ、逢ったばかりじゃないか!なんで一気にやるんだよ。起きろよワラ。放っとけないんだよー」
こみ上げてきた。七色の髪も色を失ったようだ。僕の腕の中に枯れてしまったワラ。粉も舞い上がらない…。嘘だろ。使命なんてくそくらえ、勝手に涙がこぼれる。
すると、ぼやけた視界の中で、ワラの髪がうっすらと変色し始めた。七色が抜けて水色へ。頭から次第に髪の先へ拡がるきれいな水色、アクアブルー。
「枯れるとこんなになるんだ」ぼんやり考えた僕の眼に、ほんの少しワラの瞼が動いたように見えた。え?ワラ、生き返った?
ワラはうっすらと眼を開けた。
∽ あー、なんだか優しい水が入ってきて夢から覚めたみたい。
小さな声でワラが伝えてきた。まだ語尾が震えている。
「喋らなくていい。そのままそのまま」僕はワラをそーっと抱きしめた。ワラ、良かった…。
どれ位の間、そうしていたことだろう。水色の髪のワラは僕の腕から起き上がった。腕にほんの少し水色の粉が残る。
∽ ごめんね、ありがとう。優しい水はあなただった。
やはりL1123惑星の水はワラには強すぎた。それが僕の涙で中和されたようだ。男の涙も満更捨てたもんじゃない。
∽ 報告しなくっちゃ。 ワラは言った。 「え? 帰るの?」
∽ でもきっと戻って来る。だってこんな髪の色じゃ生きてゆけないもの。
生気が戻ったワラの周囲に水色の粉が舞った。これはこれで素敵だよ。
その瞬間、僕は決めたのだ。ワラが吸収できる水を開発する。資源開発専攻の意地にかけても、君が戻るまでにきっと作って見せる。だからみんなを連れておいで。ばあちゃんにも紹介するよ。
∽ ありがとう、本当にありがとう。あなた好き。
ワラの水色の粉が僕を包んだ。僕は幸せに満たされた。で、口が滑った。
「いやあ、ワラの水色の髪、婆さんになった白髪かと思ったよ」
瞬間、僕はワラに引っぱたかれた。心のビンタは頬よりも痛い。(>_<) でも、やっぱ女の子なんだー。
ニヤついた僕が視線を戻すと、あれ? 一発喰らわしたワラはもう見えなくなっていた。空に水色の曳光、後ろには、ニヤけたエナジー監督署のオッサン。『よう判らんけど良かったじゃん、学生さん』
☆彡
水車はコットンコットン水を掻く。ワラは今どこを飛んでいるのだろう。一条の水色の光になって。
待ってるよ、プリンセスかぐや。
・・・・・☆彡・・・・・・・・☆彡・・・・・・・ <おわり> ・・☆彡・・・・・
今夜は空に橇駆るサンタさんも、夜空を眺める恋人たちも、遠く一筋のアクアブルーを見かけるかもしれません。
きよしこの夜 星は光り 救いの御子は 天を駈ける。
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