2015年11月23日月曜日

スペース・ラヴ 第2話

昨年も11月終わりに走った当尾。今年も行ってきました。加茂から山坂道で岩船寺、浄瑠璃寺を訪れ、R369に出て奈良市街経由で帰ってくる50.4kmのプチ山々コースです。今年の紅葉は少々遅い気がしますが、浄瑠璃寺の浄土式庭園は結構きれいでした。先に岩船寺に着いたんで、浄瑠璃寺まで(爽快に)下り、再度岩船寺まで(ヒーコラ)戻り登るという試練の道。これら当尾の里については昨年書いたので写真のみ。で、前々回<続きません>とか言ってた Short Storyの第2話。実は5話まであるのですね。

浄瑠璃寺 庭園。 瑠璃と言うより錦色
[前回のあらすじ]

大学で資源開発を学ぶ僕は、その留学先であるL1198惑星の宇宙ステーションで不思議な女の子に出会う。彼女は自らを植物と名乗るが虹色の髪を持つ美人。テレパシーとしか言いようのない手段で話しかけてきた。当初困惑していた僕だが、彼女の行き先が僕の帰省先であるL1123惑星であることを知り次第に魅入られてゆく。が、ふわっと消えてしまった彼女は、僕の乗る宇宙船を追い抜いて一条の光となり先に行ってしまう。僕の心は騒ぎ出した。
詳しくは http://yukikazepedaling.blogspot.jp/2015/11/blog-post_15.html

[第2話]
七色の光の筋が惑星に吸い込まれてゆく。地上で気づいた人はカラフルな流れ星と思っただろうか。

彼女は水車の横にいた。初めて見る水車と飛沫、こんなダイナミックな水があったなんて。
見上げるほどの大きな水車を見ているうちに、意識もなく彼女はすーっと浮き上がり、掻かれる水に同期し始めた。回る水車に回る七色の髪、虹の粉が周囲にまき散らされる。次第にトランス状態に昇華する彼女の心。意識は水とともに回る。知らずして泣いていた。涙は止まらない。それはまるで、大きな虹の渦が水車に寄り添っている様だった。

光速船から降りた僕は、取り敢えずエアタクシーを拾った。A15区画の水車、L1198惑星から真っ直ぐ飛ぶと、一番近いのがここなのだ。僕は留学先の大学で資源開発を専攻していて、この星の資源テクノロジィには詳しい。A15区画の水車だってレポートの参考値を取りに訪れた事があった。「急いで!」

エアタクシーが水車に到着する前から、その虹色の渦は目に入った。「なんだ?」 飛び降りた僕に降りかかる七色の粉。一瞬で僕は悟った。

「どうしたんだ? 降りといで!」絶叫する僕になお降りかかる七色の粉。「駄目だ!」僕はダッシュした。緊急停止レバー。機械的に水車を止める最終手段。必死だった。後先関係なかった。全身で飛びついた。オーーフッ!

水車が緩やかに停止すると、彼女はふわりと落ちてきた。駈け寄って抱き止める。なんて軽い。七色の粉も最後の粉雪のように静かに落ちてくる。

「起きろよ!」「頼むから起きろよ!」何度叫んだことだろう。彼女はうっすらと目を開いた。

「よかったー。大丈夫か?目が回った?」座込んだ僕の腕の中で、彼女は軽く頭を振った。粉たちがちらっと舞い落ちる。

∽ ごめん、どうなったか判らない。まだ回ってる。

「いいよ、少しこのまま休んで。水に飲まれたんだよ」

止まった水車の横で、僕と彼女は交信さえ脇に置いて静かに時を数えた。

∽ あの、本当にごめんね。見てるうちに回ってしまって…。

彼女が細い声で語りかけたその直後、僕の背後から怒鳴り声が聞こえた。
『誰だ!水車止めた奴は! 許可あっての事か!』
そうだ、大変だ。エナジー監督署がモニターしてるんだった。僕は彼女をそーっと下して怒鳴り声に相対した。
「すみません、友達が巻き込まれそうになって」そう言って僕は学生証を提示した。
『エリート学生だからってやっていい事と悪い事がある。その歳で解らんのか!』たっぷり15分はお説教されただろう。それだけの事はやったのだ。大学に通報されるのだろうか。
ようやく解放されて戻ると、彼女は起き上がり、少し浮いていた。僕のヘコみを彼女は全て感じ取っていたようだ。

∽ ごめん、私のために。あなた大丈夫かな? 本当にごめんね。

「もういいんだ。それより少し水車から離れよう。すぐに回り出すから」

再び彼女を抱きかかえ、少し離れた丘の上で介抱することにした。差し当たっては水分補給だ。

「ね、どこからでもいいから少し飲んでみなよ。この星の水は軟水だから、きっと大丈夫だよ」

∽ 駄目なの。私がこの星の水を吸収するのは私の使命なの。万全でやらないと実験にならない。

「え?実験? 何の事?」

彼女は途切れ途切れに事情を語り始めた。彼女の名前はワラ。水の星、僕たちの呼び方ではL878惑星からやって来た調査員だった・・・。

                                    <続く(そのうち)>

はい、どうなるのでしょうね。惚れた男は周囲が見えないものです。数々の不審点はあると思いますが、全編を気ままに数時間で書き流したのでご容赦下さい。

そもそもワラって名前、安直にwater? いやいや実は「ワけわかラん」の略なのですよ。意味深長。 深くないけど、隣は何考えてるか判らん秋は深し。

浄瑠璃寺 三重塔 まこと、しっとり

浄瑠璃寺本堂。小振りですが、凛としたものを感じます

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