2016年4月6日水曜日

スペース・ラヴ後編 第2話

後編第2話、ようやく僕とワラの生活が始まりました。

Sakuraミント2016
<不思議生活の始まり>

僕のアパートはワンルーム。広さはそこそこなので区切れば2DK程度にはなる。軽合金で出来たラグビーボール型で下半分に入口とバスとトイレとクローゼット類、上半分がキッチン・リビングと寝室。こんなユニットが木の葉っぱのように枝にたくさんくっついた集合住宅だ。L1198惑星ことアテーナ星は学問と芸術の星だから、住んでいるのは学生と先生、そしてアーティスト。中には両方の人もたくさん居る。いろんな星から来ているから、顔や形も様々、だけど大昔の空想のような宇宙人はいない。色や大きさやパーツの形は違えど大抵は手が2本、足が2本にプラス尻尾やらウィングやらのスタイルだった。空気の圧力は一定で、これに耐えられない場合は、耐圧ラップをコーティングしたりするが、見た目には判らない。言葉は小さなコンバータを付けるだけで頭脳間をダイレクトに中継するし、僕とワラのようにストレートに交信できる場合もある。宇宙は広いけど、案外と似たもの同士が多いのでそれ程の苦労はないのだ。宇宙文化人類学や生物学を学ぶ連中に言わせれば、それは「必然」だそうだ。どの星にも生物のヒエラルキーがあって、同じ階層同士は似てくるんだと。ま、仲良くなれるんだから悪い事じゃない。きっと宇宙のどこかに神様が居て全ての生物を統括してるんじゃないだろうか。

僕がアテーナ星のセントラルステーションに降り立ったら、既にワラは待っていた。

∞ どのお家だかさっぱり判らない。みんなシーズのような形だもん。

ワラの住む水の星には家がないそうで(ま、みんな植物だもんね)ワラも家に住むのは初めて。幸い僕の家の扉は木製だったのでワラは自由に出入りできる。家に着いたワラは珍しそうにフワフワ飛び回っていた。友達、友達じゃないとかぶつぶつ言っているのが聞こえる。生活レベルになると、ワラの事はまだ全く理解できていないのだった。よくぞ結婚を決めたものだ。
食事は水分でいいし、寝るのも僕のベットの上。軽いので僕は全く気にならない。羽衣が掛かっているようなものだ。植物なので時々太陽(火の星)の光を浴びるが、人工照明でも大丈夫だそうだ。
 僕は昼間は大学に出掛けて行く。ワラは時々ついてくるが研究室の中では退屈そうで、飽きたら勝手に出ていく。どこで何をしてるのか判らないけど、僕が帰宅すると程なく戻って来るので何の手間もかからなかった。

一緒に暮らし始めて1週間位経った休日、ワラのケラケラ笑う声が階下から聞こえた。

「何がおかしいの?」

∞ だってケイのこと、いろいろ教えてくれるの。自分で扉を思いっきり閉めて足を挟んで大騒ぎとか、本を読みながら帰ってきて扉にぶつかったとか、ケイって結構そそっかしいのねー。

「なんでそれが判るの?扉へこんでたっけ?」

∞ 扉が教えてくれたのよ。他にも面白い話ばっかり!

何の事だかさっぱり判らなかったが、ワラ曰く、扉に使われている材料は”ワラウン材”と言う名前で、”ワラウン材”になるワラウンの木は人を笑わせるのが大好きなんだそうだ。全く植物同士の関係は未知の領域だ。

∞ 水の星でもワラウンの木は、傍を通り過ぎるフィリーやリリー達を笑わせて自分も楽しんでいるのよ。笑う門には福来るって言うでしょ。だから扉には”ワラウン材”を使うの。でも気をつけてね、反対に笑うのが大嫌いな”ワラワンの木”だってあるからね。間違えるとお家が暗くなっちゃう。ワラワンの木は笑っちゃいけない場所の入口に使うものよ。

へーそうだったのか。家に住んだ事ないくせに、美人エスパーは博識だった。
それでも周囲は初めてのものばかり。ワラは何にでも話かける。木製品や布製品とは会話が弾むようだが、土や石や金属で出来たものとは会話が出来ないらしい。

∞ 何だか冷たいのよ。だまーっててバカにされてるみたい。

金属が冷たいのは不思議じゃないけど、誠に不思議な二人の生活が取り敢えずはスタートした。
一人より二人っていいもんだ、僕はこの星に留学して、初めて癒しという想いを噛み締めていた。

・・・・☆彡・・・・☆彡

まだまだ続きます。なお、後編も下記リンクに順次追加してゆきます。星空文庫は後編終了次第、UPする予定です。



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